車椅子は作る前が勝負|後悔しないために確認したい3つのポイント~その1cmが数年後の生活を変える~

車椅子作製前に全座高・後座高・車軸位置を確認し、自分に合ったポジションを検討する様子 02 日常生活
車椅子は作った後の変更が難しい場合があります。全座高・後座高・車軸位置などを事前に確認し、自分に合ったポジションを見つけることが大切です。

車椅子を使っていない人からすると、

「車椅子なんてどれも同じでは?」

と思うかもしれません。

しかし実際には違います。

車椅子は利用者一人ひとりの身体に合わせて作るものであり、その設定次第で日常生活の快適さが大きく変わります。

そして何より大切なのは、

車椅子は作ってから簡単にやり直せるものではない

ということです。

身体障害者手帳を利用した補装具制度では、自治体ごとにルールは異なりますが、支給額や更新期間に一定の制限があります。

そのため、

「作ってみたけれど合わなかった」

「もう少しこうすれば良かった」

と思っても、すぐに新しい車椅子を作れるとは限りません。

場合によっては自己負担での対応になることもあります。

だからこそ私は、

車椅子は作る前が勝負

だと思っています。

この記事では、私自身の経験も交えながら、後悔しないために確認したい3つのポイントについてお話しします。


なぜ事前確認が重要なのか

車椅子は毎日使うものです。

移動する時。

食事をする時。

仕事をする時。

買い物に行く時。

友人と話す時。

ほとんどの時間を車椅子の上で過ごします。

つまり車椅子は単なる移動手段ではありません。

生活そのものと言っても良い存在です。

もし身体に合っていなければ、

肩が痛くなる

腕が疲れる

外出が面倒になる

姿勢が崩れる

褥瘡(床ずれ)の原因になる

身体が変形する

といった問題につながる可能性があります。

たった1cm。

たった数度。

しかしその小さな違いを何年も積み重ねることで、大きな差になることがあります。

だから私は、

その1cmが数年後を変える

と思っています。


まず確認したい3つのポイント

車椅子には多くの調整箇所があります。

その中でも私が特に重要だと考えているのが、

①全座高

②後座高

③車軸位置

です。


① 全座高

全座高とは、簡単に言えば座った時の膝の高さです。

この高さが変わると、

足の位置

太ももの圧迫感

移乗のしやすさ

机との相性

などが変わります。

高すぎても低すぎても快適ではありません。

また、自宅のテーブルや洗面台、職場の机などとの関係もあります。

病院で試した時には良くても、自宅で生活すると違和感が出ることもあります。

そのため、

「自分はどの高さが楽なのか」

を意識して確認することが大切です。


② 後座高

後座高とは、お尻側の高さです。

この数字によって座面の傾きが変わります。

後座高を下げると身体が座面に収まりやすくなり、安定感が出ることがあります。

反対に高くすると移乗しやすくなる場合があります。

しかし人によって感じ方はまったく違います。

筋力

障害の状態

体型

クッション

座り方

これらによって最適解は変わります。

だからこそ、

「みんながこうだから」

ではなく、

「自分はどう感じるか」

を大切にしてほしいと思います。


③ 車軸位置

私が最も重要だと思っているのが車軸位置です。

後輪の中心位置を前後に動かすことで、車椅子の性格そのものが変わります。

前にすると

軽くこげる

小回りが利く

段差が上げやすい

反面、

後ろに転びやすい

不安定になる

という特徴があります。


後ろにすると

安定する

転倒しにくい

安心感がある

反面、

重く感じる

小回りしにくい

肩への負担が増える

ことがあります。

どちらが正しいという話ではありません。

大切なのは、

自分の生活環境に合うか

です。


3つは組み合わせで考える

ここで重要なのは、

全座高

後座高

車軸位置

を別々に考えないことです。

例えば、

後座高を下げる

車軸を前にする

と、

こぎやすく感じる人もいます。

反対に、

後座高を上げる

車軸を後ろにする

と、

安定感を得られる人もいます。

つまり、

数字単体ではなく組み合わせ

で考える必要があります。


自分の数字を記録する

車椅子を作る時におすすめしたいのが、

数字を残すことです。

例えば、

後座高45cm

前座高51cm

前後差6cm

車軸位置○cm

というように記録しておきます。

人によっては、

前座高と後座高の差が6〜8cmくらいで快適に感じる場合もあります。

もちろん全員に当てはまるわけではありません。

しかし、自分の数字を知ることは大きな財産になります。


車椅子利用者の意見は宝物

もし周囲に車椅子利用者がいたら、ぜひ積極的に話を聞いてみてください。

病気や障害の状態が違えば、必ずしも同じ設定になるわけではありません。

しかし、

「なぜその設定にしたのか」

という経験談は非常に参考になります。

例えば、

なぜその車軸位置にしたのか。

なぜノーパンクタイヤを選んだのか。

なぜ前輪を大きくしたのか。

なぜ背もたれを低くしたのか。

実際に何年も使っている人の話には、カタログには載っていない知識があります。

私自身も、多くの先輩利用者から教えてもらった経験があります。

遠慮せずに聞いてみることをおすすめします。


専門家や業者任せにしない

もちろん、

業者さん

理学療法士

作業療法士

医師

の意見は重要です。

しかし、

「専門家が決めたから大丈夫」

で終わってはいけません。

なぜなら、

実際に毎日使うのは本人だからです。

専門家はあなたの生活を24時間見ているわけではありません。

自宅の廊下の幅。

よく行くスーパー。

職場の環境。

車への積み込み。

坂道。

段差。

これらを一番知っているのは本人です。

だからこそ、

遠慮せず質問する。

納得できるまで確認する。

分からなければ聞く。

気になるなら試す。

この姿勢が大切です。


面倒でも確認を繰り返そう

車椅子を作る時、

何度も質問するのは申し訳ない。

細かいことを聞くのは迷惑かもしれない。

そう思う人もいるかもしれません。

しかし私は逆だと思います。

車椅子は何年も使うものです。

確認不足で後悔するくらいなら、

作る前に何度でも確認した方が良い。

車軸を1cm動かしたらどうなるのか。

後座高を1cm下げたらどうなるのか。

前輪サイズを変えたらどうなるのか。

そうした疑問は遠慮せず聞くべきです。

むしろ真剣に考えている利用者ほど、良い車椅子に近づけると思います。


前輪・タイヤ・背もたれも忘れずに

今回紹介した3つ以外にも、

シート幅

前輪サイズ

タイヤ

背もたれ高さ

なども重要です。

例えば、

前輪が細いと小回りしやすい反面、砂利やグレーチングにはまりやすくなります。

ノーパンクタイヤは安心感がありますが、少し重く感じることがあります。

背もたれを高くすると安定感は増しますが、車への積み込みで邪魔になることもあります。

こうした部分も生活環境を想像しながら考えたいところです。


まとめ|車椅子は作る前が勝負

車椅子は作って終わりではありません。

むしろ作る前の準備こそが重要です。

特に、

全座高

後座高

車軸位置

この3つは車椅子の基本となる部分です。

そして大切なのは、

専門家任せにしないこと。

車椅子利用者の経験談を聞くこと。

面倒がらずに質問すること。

自分の数字を記録すること。

車椅子は、これから何年も一緒に過ごす大切なパートナーです。

だからこそ妥協せず、自分自身が納得できるまで確認してほしいと思います。

その1cmが、数年後の生活を変えるかもしれません。


竹内 啓悟(Wheelchair Project Japan 代表)

静岡県在住の車椅子ユーザー(頚髄損傷)。

車椅子での防災、バリアフリー、福祉、地域イベントを実際に体験・取材し、当事者の視点で情報を発信しています。

Wheelchair Project Japanでは、「誰もが安心して暮らせる地域づくり」を目指し、車椅子ユーザーの視点から現地調査や情報発信に取り組んでいます。

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