このたびの熊本をはじめ、各地で発生した地震、豪雨、台風などの災害により被害を受けられた皆様に、心よりお見舞い申し上げます。あわせて、ご家族の皆様、復旧・支援に尽力されている皆様に深く敬意を表します。
記事の目的
9月は防災月間です。各地で防災訓練が実施される時期にあわせ、昨年12月に原谷第二団地で行われた小規模の地域による防災訓練を記録します。
本記事では、訓練内容、車椅子利用者の視点から見えた課題、今後の備えとして確認したい事項を整理します。

訓練の概要
- 実施時期:2025年12月
- 実施場所:掛川市本郷・原谷第二団地、公民館
- 実施内容:水消火器の操作、アルファ米づくり、応急手当、発電機確認など
- 参加者:地域住民(約80人)
地域では毎年12月に小規模な防災訓練を実施。訓練の時期は地域ごとに異なるが、日頃から備えを確認する機会として有効。
地域訓練の意義
今回の地域防災訓練には次のような意義があります。
- 防災用品を実際に扱い、使い方を確かめる
- 災害時の役割や行動を地域で共有する
- 高齢者、子ども、障害のある人の課題を確認する
- 住民同士が顔を合わせ、声をかけ合う関係づくり
- 訓練で見つかった課題を次の備えへつなげる場
防災対策は、一度の訓練で完成するものではない。体験、共有、意見交換を重ねることが、地域に合った対策につながる。
公民館と広域避難所
今回、公民館は訓練会場の一つとして使用。災害時の広域避難所は、公民館ではなく隣接する原谷小学校になる。
公民館で確認した点
- 空調設備あり
- 入口にスロープあり
- トイレは多目的トイレに近い造り
- 車椅子利用者や高齢者にとって利用しやすい環境
- 訓練や情報共有、地域の集まりの場として有効
避難時の考え方と未確認事項
原谷第二団地は鉄筋コンクリート造。大きな地震が起きた場合でも、建物と自宅の安全が確保されていれば、まず自宅で待機する在宅避難が現実的な選択肢となる。
一方で、建物の損傷、火災、浸水などにより自宅で安全を確保できない場合は、避難が必要となる。
避難を考える主な場面
- 建物に大きな損傷がある
- 火災が発生している
- 大雨や河川の氾濫により浸水のおそれがある
- 自宅で安全に過ごせない
- 周囲の状況から避難が必要と判断される
現時点で未確認の事項
- 災害時、団地住民へ避難に関する情報が届く仕組み
- 行政からの情報が届く手段
- その情報を誰が、どのタイミングで確認するのか
- 在宅避難をする住民の把握方法
- 在宅避難者への水、食料、情報の届け方
- 原谷小学校へ避難する場合の、車椅子利用者の移動方法
- 避難所内で利用できるトイレ、寝る場所、充電などの環境
「避難が必要になった時に、どの情報を頼りに、どこへ、どのように移動するのか」が十分に分かっていないこと自体が課題。この点は、自治会、行政、地域住民の間で確認が必要。
消火器体験
訓練では、参加者が順番に水消火器を使用。火元を想定した目標に放水。
団地内には、端から端までおおむね一つずつ消火器を常設。火災時に使用できる体制を確保。

体験から確認した点
- 消火器は想像以上に重い
- 持ち運びや操作に力を要する
- 安全ピンを抜き、ホースを向け、レバーを握る操作を確認
- 火災現場では、煙や熱により近づくこと自体が危険
課題
- 高齢者、子ども、車椅子利用者などが、消火器を火元まで運べるとは限らない
- 緊急時に一人で初期消火を行うことは困難な場合がある
- 設置場所を意外と知らない。また設置場所を知っていても、操作経験がない人が多い
今後の備え
- 自宅近くの消火器の設置場所を確認
- 消火、119番通報、周囲への連絡などの役割を想定
- 炎や煙が大きい場合は、初期消火より避難を優先
- 実際に持って操作する訓練を継続
アルファ米づくり
訓練では、非常食であるアルファ米づくりを実施。
アルファ米は、お湯または水で調理可能。水で調理する場合は完成まで時間を要するため、お湯を確保できるかが課題となる。

体験から確認した点
- アルファ米は、災害時の食事として有効
- 水でも調理可能
- お湯を使用する場合は準備時間を短縮
- 非常食は、備蓄だけでなく実際に作る経験も必要
課題
- 停電やガス停止時の熱源確保
- 飲料水に加え、調理用の水も必要
- カセットコンロを安全に使える状況かの確認
- 袋の開封や調理が難しい人への配慮
- 夏場など食中毒の恐れもあるので注意
今後の備え
- 非常食を自宅で一度作り、手順を確認
- カセットコンロとガスボンベを備蓄
- 飲料水と調理用の水を分けて準備
- お湯が不要な食品も備蓄
- 一人で開封・調理できるかを確認
応急処置の確認
訓練では、応急処置に関する説明と対応の確認を実施。
災害時には、けがや体調不良への対応が必要となる場合がある。救急隊や医療機関による支援がすぐに受けられない状況も想定されるため、地域で基本的な対応を確認しておくことが重要。

確認したい事項
- けが人や体調不良の人を発見した際の連絡方法
- 119番通報時に伝える内容
- 周囲の人へ協力を求める方法
- 応急処置用品の保管場所
- 高齢者、障害のある人、持病のある人への配慮
課題
- 緊急時に、誰が連絡や対応を担うか
- 応急処置用品がどこにあるか
- 地域内で支援が必要な人を把握できているか
- けが人を安全な場所へ移す必要が生じた場合の対応
応急処置は、専門的な医療行為を行うことだけを意味しない。周囲へ知らせ、119番通報を行い、安全を確保する行動も重要な対応となる。
発電機の活用
倉庫内では、発電機を確認。
日頃は地域のお祭りやイベントなどで使用されている設備。停電を伴う災害時には、照明、情報機器、充電などの電源として活用できる可能性がある。
確認が必要な事項
- 災害時の使用判断を行う担当者
- 燃料の備蓄量と保管状況
- 使用できる機器と利用の優先順位
- 屋外で安全に設置・運転できる場所
- 車椅子利用者や在宅避難者への電源支援の方法
発電機は、地域の電源確保を考える上で重要な設備。平時の活用に加え、災害時の運用方法を事前に確認することが課題となる。

車椅子利用者として確認したい事項
- 車椅子で通れる避難経路に、段差や障害物がないか
- 自宅で数日間過ごすための水、食料、電源が足りているか
- 停電時の照明、スマートフォン充電、情報収集の手段があるか
- 断水時の給水方法や、支援情報の入手方法を知っているか
- 在宅避難者へ、水・食料・情報が届く仕組みがあるか
- 避難所のトイレ、移動、寝る場所が利用可能か
- 近所の人と、緊急時の連絡や手助けについて話せているか
まとめ
災害への備えは、情報を集めるだけでは十分ではありません。テレビやSNS、YouTubeなどを通じて多くの知識に触れられる今だからこそ、まずは地域や会社の防災訓練に参加してみることが大切だと感じました。
実際に参加すると、防災用品に触れたり、避難場所までの動きを確かめたり、住民や職場の人と顔を合わせたりする中で、自分にとっての不安や課題が見えてきます。その気づきを一人で抱え込まず、周囲と共有することが、次の備えにつながります。
特に、高齢者や障害のある人など、移動や避難に困難を抱える人にとっては、災害が起きてから初めて助け合い方を考えるのでは遅い場合があります。日頃から声をかけ合い、顔の見える関係をつくり、小さな不安要素を少しずつ減らしておくことが大切です。
防災を難しく考えすぎず、まずは一度参加してみる。そこで感じたことを自分自身と周囲の人で共有する。その積み重ねが、地域に合った現実的な備えになると思います。
今回の訓練を準備・運営してくださった地域の防災関係者の皆さま、そして参加された皆さまに、心より感謝申し上げます。日頃から地域の安全を支え、顔の見えるつながりをつくってくださっていることの大切さを、あらためて感じました。ありがとうございました。
※本記事は、2025年12月に原谷第二団地で実施された防災訓練に参加した個人の記録です。災害時の行動は、災害の種類、建物の状況、自治体の避難情報などにより異なります。お住まいの地域の防災計画・避難情報もあわせて確認ください。
竹内 啓悟(Wheelchair Project Japan 代表)
静岡県在住の車椅子ユーザー(頚髄損傷)。
車椅子での防災、バリアフリー、福祉、地域イベントを実際に体験・取材し、当事者の視点で情報を発信しています。

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