はじめに
「停電くらいなら、少し待てば戻るでしょ」
そう思う人も多いかもしれません。
たしかに、数分から数十分で復旧する停電もあります。しかし、地震・台風・大雨・設備トラブルなどが重なると、停電は数時間から数日、場合によってはさらに長引くことがあります。
そして車椅子ユーザーにとって停電は、単に「暗い」「不便」という話では終わりません。
生活そのものが止まる可能性があります。
私は静岡県に住んでいます。
静岡県では、南海トラフ巨大地震への備えが長年言われています。さらに、台風・大雨・河川氾濫・土砂災害・津波・富士山噴火など、複数の災害リスクがあります。
そして、それらに共通して起こり得るのが「停電」です。
この記事では、停電したときに車椅子ユーザーが実際に困ることを、日常視点も交えながら整理し、今後の備えについても詳しくまとめます。
停電でまず困るのは「移動できないこと」
停電というと、多くの人はまず「部屋が暗くなること」を想像するかもしれません。
ですが、車椅子ユーザーにとって最初に大きな問題になるのは、「移動」です。
電動車椅子は“電気”で動いている
電動車椅子を利用している方にとって、バッテリーは命綱です。
停電によって充電ができなくなると、移動範囲はどんどん狭くなります。
たとえば、
- トイレへ行けない
- 別の部屋へ移動できない
- 避難できない
- 支援物資を受け取りに行けない
こうした問題が現実になります。
「移動できない」ということは、自由を失うだけではありません。
生活の選択肢そのものが減っていく感覚です。
エレベーター停止は深刻な問題
マンションや団地など、上階に住んでいる場合はさらに深刻です。
停電によってエレベーターが止まると、
「避難してください」
と言われても、階段しか使えません。
これは、実際に車椅子ユーザーが直面し得る大きな壁です。
特に地震直後は、
- エレベーター停止
- 家具転倒
- 停電
- 通信障害
が同時に起こる可能性があります。
「外へ出る」という当たり前の行動が、一気に難しくなる場合があります。
情報が入らないことが強い不安につながる
停電すると、テレビが消えます。
Wi-Fiルーターも止まります。
スマホも時間とともに充電が減っていきます。
すると次第に、
- いつ復旧するのか
- どこが危険なのか
- 避難所は開いているのか
- 家族は無事なのか
が分からなくなります。
人は「分からないこと」に強い不安を感じます。
特に一人暮らしや、昼間に一人でいる時間が長い方は、孤立感が一気に増します。
情報弱者にならないための備え
停電時に役立つものとして、
- モバイルバッテリー
- 乾電池式ラジオ
- 予備充電ケーブル
- LEDランタン
- 家族との連絡ルール
などがあります。
「災害時はLINEで連絡」
と決めていても、通信障害が起こる場合があります。
だからこそ、
- 複数の連絡手段
- 紙の連絡先
- 事前ルール
を決めておくことが大切です。
夜になると生活難易度が一気に上がる
昼間はなんとか動けても、夜になると停電の怖さは急激に増します。
暗闇は車椅子ユーザーにとって危険が多い
暗い室内では、
- テーブルの角
- 床の段差
- コード類
- 倒れた家具
などが見えにくくなります。
健常者でも危険ですが、車椅子ユーザーや身体が不自由な方にとってはさらに危険です。
少しの接触でも、
- 転倒
- ケガ
- 車椅子損傷
につながる可能性があります。
明かりは1つでは足りない
懐中電灯1本だけでは不十分です。
おすすめは、
- ヘッドライト
- LEDランタン
- 小型懐中電灯
- 足元ライト
など、用途を分けて複数持つことです。
特にヘッドライトは、両手が空くので非常に便利です。
トイレ問題は想像以上に深刻
停電時に見落とされやすいのが、トイレ問題です。
断水が同時に起これば、自宅トイレが使えない場合があります。
そして、車椅子ユーザーにとってのトイレは、単なる設備ではありません。
「行くまで」が大変
車椅子ユーザーにとっては、
- 移動
- 姿勢保持
- 介助
- 空間確保
など、複数の要素が関係します。
そこへ停電が加わると、
- 暗くて危険
- 水が流れない
- 介助しづらい
- 長時間待てない
などの問題が重なります。
非常用トイレは本当に重要
これは「あると便利」ではなく、
「かなり重要な備え」
です。
おすすめは、
- 携帯トイレ
- 凝固剤付き非常用トイレ
- 消臭袋
- ウェットティッシュ
- 使い捨て手袋
など。
食料より先にトイレ問題で困る可能性もあります。
介助・医療機器への影響も大きい
人によっては、ここが最重要になります。
たとえば、
- 電動ベッド
- 吸引器
- 呼吸器関連機器
- 電動リフト
- 空調管理
など。
これらは停電によって生活や健康に直結します。
一般家庭では見落とされやすいですが、必要な人にとっては命に関わる問題です。
事前相談も大切
必要に応じて、
- 主治医
- ケアマネジャー
- 訪問看護
- 福祉課
- 電力会社
などへ相談しておくことも重要です。
大きな地震で起こり得ること
静岡県では、南海トラフ巨大地震への警戒が続いています。
もし大きな揺れが発生した場合、
- 広域停電
- 通信障害
- 断水
- 道路寸断
などが同時に起こる可能性があります。
さらに車椅子ユーザーにとっては、
- エレベーター停止
- 家具転倒による移動不能
- 避難ルート寸断
- 支援不足
も現実的な問題です。
「誰かが助けてくれる前提」
だけでは危険な場合があります。
だからこそ、
- 数日分の備蓄
- モバイルバッテリー
- 非常用トイレ
- ライト
- 常備薬
などを、自分が使いやすい位置へ置いておくことが重要です。
沿岸部では津波停電も起こり得る
国内では海沿いエリアと内陸部で状況が大きく異なります。
沿岸部では、津波による被害も想定されています。
津波では、
- 電柱倒壊
- 変電設備被害
- 道路冠水
- 通信障害
などによる広域停電が起こる可能性があります。
また、車椅子ユーザーにとって津波避難は非常に大きな課題です。
「すぐ高台へ逃げる」
という行動が、身体状況によっては難しい場合があります。
そのため、
- ハザードマップ確認
- 避難ルート確認
- 福祉避難所確認
を事前に行うことが重要です。
山間部では土砂災害と孤立リスク
大雨や地震では、
- 土砂崩れ
- 道路寸断
- 孤立化
なども起こり得ます。
もし道路が塞がれれば、
- 支援物資が届かない
- 通院できない
- 介助者が来られない
という問題も発生します。
停電が長引けば、
- 医療機器
- 通信手段
- 冷蔵保存薬
にも影響が出ます。
「家にいるから安心」とは限らない現実があります。
河川氾濫と停電は同時に起こる
近年は、線状降水帯による大雨も増えています。
洪水時には、
- 停電
- 断水
- 道路冠水
が同時に発生する場合があります。
そして冠水道路は、車椅子にとって非常に危険です。
少しの水深でも、
- タイヤが取られる
- 側溝が見えない
- 電動車椅子故障
などにつながります。
無理に移動しない判断も大切です。
富士山噴火と「見えにくい停電リスク」
静岡県や山梨県そして関東エリアでは、富士山噴火も無関係ではありません。
火山灰が降ると、
- 送電設備障害
- 車両故障
- 視界悪化
- 空気環境悪化
などが起こります。
さらに灰は滑りやすく、車椅子移動にも影響します。
電動車椅子では、精密機器への灰侵入も不安要素になります。
災害ごとに違っても、共通する備えはある
ここまで見ると、災害ごとに状況は違います。
ですが、共通して重要な備えもあります。
たとえば、
- 停電対策
- 情報手段確保
- 非常用トイレ
- 備蓄
- 避難ルート確認
- 近所とのつながり
です。
完璧を目指す必要はありません。
まずは、
「停電したら、自分は何に困るか」
を考えることが第一歩です。
まとめ|停電は「ただ暗くなること」ではない
停電とは、単に部屋が暗くなることではありません。
車椅子ユーザーにとっては、
- 移動できない
- 情報が入らない
- トイレが困る
- 介助が難しくなる
- 暑さ寒さが危険になる
など、生活全体へ影響する問題です。
そして静岡県や関東から東海地方では、
- 南海トラフ地震
- 津波
- 洪水
- 土砂災害
- 富士山噴火
など、複数の災害リスクがあります。
だからこそ、防災は「怖がるため」ではなく、
安心して暮らすための準備
だと私は思っています。
もしこの記事を読んで、
「少し備えてみようかな」
と思ったなら、今日ひとつだけでも始めてみてください。
- モバイルバッテリーを充電する
- 非常用トイレを買う
- 家族と話し合う
- 懐中電灯を置く
その小さな一歩が、未来の自分を助ける力になるかもしれません。
竹内 啓悟(Wheelchair Project Japan 代表)
静岡県在住の車椅子ユーザー(頚髄損傷)。
車椅子での防災、バリアフリー、福祉、地域イベントを実際に体験・取材し、当事者の視点で情報を発信しています。
Wheelchair Project Japanでは、「誰もが安心して暮らせる地域づくり」を目指し、車椅子ユーザーの視点から現地調査や情報発信に取り組んでいます。


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