「帰れない」が現実になる瞬間
地震や台風、大雨などの災害時、ニュースではよくこう流れます。
「電車は終日運転見合わせ」
「バスは全線運休」
「高速道路通行止め」
しかし、その言葉の裏では、多くの人が“帰宅困難”になります。
そしてそれは、車椅子利用者だけではありません。
大災害時は、健常者であっても、
- 長距離徒歩
- 数時間待機
- 情報不足
- 猛暑
- 寒さ
- 雨
などによって、体力を大きく消耗します。
そのうえで、車椅子利用者には、
- エレベーター停止
- 段差
- トイレ
- 介助
- 長時間同姿勢
など、さらに多くの問題があります。
つまり、
「公共交通が止まる」
とは、
単に移動できないだけではなく、
“その場で耐えられるか”
という問題にもなるのです。
車椅子利用者にとって公共交通は生活インフラ
車椅子利用者の移動は、人によって大きく違います。
- 電車
- バス
- 福祉タクシー
- 自家用車
- 送迎
など、地域や身体状況によってさまざまです。
特に都市部では、電車やバスが生活そのものになっている人もいます。
しかし災害時、その前提は簡単に崩れます。
- 電車停止
- 駅封鎖
- 停電
- エレベーター停止
- バス運休
こうなると、
「移動手段そのものが消える」
ことがあります。
エレベーター停止は非常に深刻
車椅子利用者にとって、駅のエレベーターは単なる便利設備ではありません。
“移動そのもの”
です。
しかし災害時には、
- 停電
- 点検
- 故障
- 安全確認
などで停止する場合があります。
すると、
- ホームへ行けない
- 地上へ出られない
- 乗り換えできない
という状況になります。
たとえ電車が復旧しても、
エレベーターが止まっていれば利用できない
場合があります。
これは健常者には見えにくい問題かもしれません。
しかし、車椅子利用者にとっては非常に大きな問題です。
バスやタクシーも簡単には利用できない
災害時、
「バスで帰ればいい」
「タクシーを使えばいい」
と思うかもしれません。
しかし現実には、多くの人が同じことを考えます。
つまり、
健常者も含め、大勢の人が一斉に利用しようとする
のです。
すると、
- 長蛇の列
- 数時間待ち
- 配車不能
- 交通渋滞
が発生します。
しかも、その待機環境は決して良いとは限りません。
「待つこと」が危険になる場合もある
例えば、
- 真夏の猛暑
- 真冬の寒さ
- 台風時の雨風
こうした環境で、長時間外で待機することがあります。
健常者でも体調を崩す状況です。
そのうえで車椅子利用者は、
- 体温調整
- 長時間座位
- 血流悪化
- 褥瘡
- 疲労
- 痛み
など、さらに身体負担が大きくなります。
また、
- 雨で車椅子が濡れる
- 手が冷える
- クッションが濡れる
- 衣類が乾かない
といった問題もあります。
つまり、
「待てばなんとかなる」
とは限らないのです。
「帰宅困難」は誰にでも起こる
ここで大切なのは、
車椅子利用者だけが大変なのではない
という視点です。
東日本大震災では、多くの人が徒歩帰宅を余儀なくされました。
道路は人であふれ、
- コンビニ品切れ
- トイレ不足
- スマホ充電切れ
- 休憩場所不足
など、多くの問題が発生しました。
つまり、大規模災害では、誰でも“移動弱者”になり得ます。
そのうえで、
- 車椅子利用者
- 高齢者
- 妊婦
- 子ども連れ
- 持病のある人
などは、さらに厳しい状況になりやすい。
そう考えることが重要なのだと思います。
職場は「帰宅困難」を前提に考える必要がある
これは非常に重要です。
災害時、多くの人が「帰らなければ」と考えます。
しかし実際には、
無理に移動しないほうが安全
な場合があります。
特に、
- 深夜
- 大混雑
- 停電
- 豪雨
- 猛暑
などでは、無理な移動が危険になります。
だからこそ職場側も、
- 一時待機
- 宿泊スペース
- 飲料水
- 非常食
- 充電環境
- 毛布
- トイレ
などを考えておく必要があります。
そして車椅子利用者については、
- バリアフリー動線
- 多目的トイレ
- 介助対応
なども含めて検討が必要です。
「今日は帰れない」を想定しておく
防災で大切なのは、
「必ず帰れる前提」で考えないこと
です。
例えば、
- モバイルバッテリー
- 常備薬
- 飲料
- 軽食
- 防寒具
- 雨具
- 携帯トイレ
などを持っているだけでも違います。
さらに、
“帰れなかった場合”
を考えておくことも重要です。
ホテルや避難先を日頃から知っておく
これは意外と重要です。
例えば、
- バリアフリー対応ホテル
- 深夜利用可能施設
- 福祉避難所
- 多目的トイレの場所
などを、普段から知っておくだけでも安心感が違います。
特に車椅子利用者は、
「泊まれる場所」が限られる
場合があります。
段差。
狭い通路。
ユニットバス。
重いドア。
だからこそ、事前情報が重要になります。
家族や友人とのつながりも防災になる
災害時、本当に助けになるのは“人とのつながり”です。
- 家族
- 友人
- 職場
- 介助者
- 近所
との連携。
「連絡が取れなかったら」
「どこで待つか」
「誰が迎えに来るか」
を共有しておくだけでも違います。
災害時は、普段できることができなくなります。
だからこそ、
“一人で無理をしない準備”
も重要なのだと思います。
まとめ|「移動できない前提」で考える防災
公共交通機関の停止は、単なる不便ではありません。
場合によっては、
「その場で長時間耐えなければならない」
状況になります。
猛暑。
寒さ。
雨。
混雑。
長時間待機。
それは健常者でも厳しい環境です。
そのうえで車椅子利用者には、
- エレベーター停止
- トイレ
- 介助
- 長時間座位
- 宿泊先
など、さらに多くの課題があります。
だからこそ必要なのは、
「必ず帰れる前提」で考えないこと
だと思います。
職場。
ホテル。
家族。
友人。
避難先。
そうした“つながり”や“情報”も、防災の大切な備えなのだと思います。
竹内 啓悟(Wheelchair Project Japan 代表)
静岡県在住の車椅子ユーザー(頚髄損傷)。
車椅子での防災、バリアフリー、福祉、地域イベントを実際に体験・取材し、当事者の視点で情報を発信しています。
Wheelchair Project Japanでは、「誰もが安心して暮らせる地域づくり」を目指し、車椅子ユーザーの視点から現地調査や情報発信に取り組んでいます。

コメント